2005.08.17 *Wed

『ライトノベル』と『少女小説』

『ライトノベル』という言葉は数年前から使われ出し、今ではかなりの市民権を得ているようです。これ以前には『ヤングアダルト』が使われていたのですが、これは内輪だけの言葉で一般にはあまり浸透しませんでした。『アダルト』という言葉に「18禁」のニュアンスがあり、『ヤングアダルト』とはいったい何をさすのか門外漢には判りにくかったのも確かです。その点『ライトノベル』は明快でした。『ライトノベル』という名が付けられたことでライトノベルそのものが内輪のものでなくなり、広く世間に知られるようになったとも考えられるのです。
その結果起こった『ライトノベル』評論本ブームはなんだか80年代の少女マンガ評論ブームを彷彿とします。当時、批評家たちは未知の大陸『少女マンガ』を発見して狂喜乱舞したわけですが、元々そこに棲んでいた少女マンガ・ネイティブにとっては発見でも何でもなかったのでした。
ここで問題なのは『ライトノベル』という言葉の定義です。これら最近の評論本の対象になっているのは実は『少年向けライトノベル』のことなんですね。ほとんどの評論本で少女向けはすっぽり抜け落ちています。(雑草社の「データブック」だけは「少年系」と謳っているので「少女系」を別に出すつもりかも知れませんが)そもそも『少女向けライトノベル』は『ライトノベル』に分類されないのではないか、という考え方もあるわけなのですが、それを表す適当な言葉がないのです。
『少女小説』という言葉もありますが、いかにも古色蒼然としていますし、何より多様化した現在の少女向けエンターテイメント小説のあり方は『少女小説』という呼び方にそぐわなくなってきています。
独立した呼び名がないために『少女向けライトノベル』は『ライトノベル』の一部とされ、しかし言及されない=知覚されない=存在しない、ということになってしまいます。そういうわけで『少女向けライトノベル』はライトノベル大陸の半分を占めるにも拘わらずあたかもそこに存在しないかのような、目に見えない幻の土地になっているのです。
見えないのは名前がないからです。

つまり、《真名の呪力》の法則が働いているのです。

人は名によってものを認知し、認識するのです。名前の無いものは存在しないのと同じで、知覚されません。透明な存在になっている少女向けライトノベルに正しい名が与えられればたちどころに目に見える存在になり、外の世界の人々にも認知されるに違いありません。《呪力》というのがお気に召さないなら、《パッケージング》と言い換えてもいいでしょう。資本主義社会に於いて名前がどれほど大事かは商品名の考案を専門にする会社が大きな業績をあげていることでも解ります。パッケージングされることによる自己規制、縮小再生産を危惧する声もありますが、認知されなければ縮小され得るそもそもの生産もなされないわけですから。

そういうわけで、『少女小説』に代わる少女向けエンターテイメント小説の良い呼び名はないものでしょうか。かつての『少女小説』は《真名》が付けられるのを待っているのです……。
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2005/08/21(日) 19:01:37 | 積読山脈造山中 [Del
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