縞田理理の《とろいのです》。

本、音楽、映画、オヤツなどについてちょびちょび 書いていきたいな~と。感想はネタバレなしの方針で。

『バラッドの世界-ブリティッシュ・トラッドの系譜-』茂木健

ふふふ~買っちゃいました! ずっと入手困難本になっていて、再版されるのを待ってたんです。待てばカイロの日和あり!\(^_^)/ 巻末に現在のトラッドシーンに関する30枚の加筆もあり! 以前の版はモリスダンサー(男性によって踊られるイングランドの伝統ダンス)の可愛いイラストだったのですが、新装版はフィドルを弾くにゃんこのイラスト。これも可愛いですv

思えば図書館でこの本に出逢ったのは5年以上前でしょうか。《ラノン》を書き始める前です。それ以前からトラッド音楽に興味はあったのですが、本書のお陰でずっぽりハマりました。スコットランド、アイルランド、イングランドの伝統音楽について客観的立場からその歴史と意味を包括的に解説しています。ブリティッシュ・トラッド初心者にも、トラッド好きにもオススメです。
何かひとつの主義主張に凝り固まっていないのも良いです。イングランドとケルティック・フリンジ(イングランドによって征服された旧ケルト・エリア。スコットランド、アイルランド、ウェールズ、コーンウォールを指す)との間にはどうしても支配ー被支配の因縁があり、感情的になりがちです。しかし本書ではどちらかに肩入れすることなく淡々と事実が述べられ、スコットランドやアイルランドに比べて現存するものが少なく、聴く機会もほとんどないイングランドの伝統音楽についても触れられています。
妖精や異界関係の歌については《スカーバラ・フェア》と《クルエル・マザー》が挙げられています。
(英国のトラッドである《スカーバラ・フェア》をサイモン&ガーファンクルのポール・サイモンが「盗んだ」件について、巻末の加筆部分で和解したという報告がありました。良かったです)

実は、《ラノン》シリーズを書くにあたっては本書『バラッドの世界』から大きな影響を受けています。
《ラノン》2巻で妖精たちが練り歩きながら合唱するラノンの軍歌(勝手に《誰に我らを阻めよう》というタイトルをつけています^^;)や、クリップフォード民謡《ミソサザイに訊いてみろ》、《星の銀輪めぐる夜に》の歌詞を作詞する際にはこの本で解説されているオールド・バラッドの構成、法則を参考にして不自然にならないよう気をつけました。基本的に4行詩であることやリフレインや意味のないスキャットの多用、マジックナンバーについてなどです。
そもそも作中に自作バラッドを使ったこと自体、本書の影響と言えるかも知れません。

バラッドというものがどういうものかというと、物語性のある伝統歌、とでも言えば良いのでしょうか。本書では素晴らしいバラッドがいくつも紹介されているのですが、ここにその歌詞を書くわけにはいかないのでラノンの作中で使った自作バラッドの一部を挙げてみます。(この歌はネタバレには関係しないので……^_^;)

《誰に我らを阻めよう》
  勝鬨をあげ 我らは行く
  見よや 我らが旗印
  幾万の丘を越え 我らは行く  
  空の上 波の下 誰に我らを阻めよう 
  (コーラス)

まあ、だいたいこんな感じ、ということで……(;^_^A

ついでながらランダル・エルガーの名はこの本で紹介されているオールド・バラッド《ロード・ランダル》からとりました。(この曲はボブ・ディランが「激しい雨が降る」というタイトルで歌っているそうです)。
また本書ではスコットランドのバラッド《フランスから来たのか?》-Come Ye O'er Frae France-という曲が紹介されていますが、この曲には「ロンドン」が「ルノン」と発音される部分があります。この曲はスコットランドの歌手アイラ・セントクレアのアルバム「Inheritance」に入っていて、注意深く聴くとちゃんと「ルノン」と聞こえるのです。


この本を読んでから本腰を入れてトラッド音楽CDの収集を始めました。
『バラッドの世界』で紹介された曲で入手したものをご紹介します。

《Scarborough Fair》
アーティスト Martin Carthy  アルバム「1st Album」
ポール・サイモンのものより早くにレコーディングされたスカーバラ・フェア。サイモンの甘い歌声とは違い、ざらりとした耳障りが土の匂いを感じさせる歌唱です。

《Cruel Sister》
アーティスト The Pentangle アルバム「Cruel Sister」
バラッドの美しさ、残酷さを余すところ無く伝える名曲です。この曲には多くのヴァリエーションがあり、別バージョンの《Two Sisters》は ClannadのThe Ultimate CollectionとNiamh Parsonsの「In My Prime」にも収録されています。特にNiamh Parsonsの方は無伴奏で女性二人のデュエットという形で歌われているため、歌の内容と相まって鬼気迫ります。

《フランスから来たのか?》-Come Ye O'er Frae France-
アーティスト Isla St Clair  アルバム「Inheritance」
アイラ・セントクレアはスコットランドの女性歌手。トラッドをモダンな演奏で歌うタイプ。クリスタルヴォイス系ですが、エフェクトやシンセを多用したヒーリング系です。トラッド入門向け。

《The Skye Boat Song》
アーティスト Moira Kerr   アルバム「MacIain Of Glencoe」
スコットランドの女性歌手モイラ・ケールが歌っています。力強い声、ほどよくシンプルな歌唱法は気持ちがよいです。イングランドに対して反旗を翻し、そして敗北したスコットランド王位継承者チャールズ・エドワード・スチュワートをスカイ島へと運んだ小舟を歌ったもの。《麗しき王子》チャールズはこのとき女装していたとも言われています。

《Sinil A Run》
アーティスト Clannad  アルバム「The Ultimate Collection」/「The Celtic Voice」
言わずと知れたエンヤの家族バンド、クラナド。この二枚はどちらもベスト版です。兵隊に取られた恋人を想う娘の哀しい心を歌った歌。


それから、『バラッドの世界』では紹介されていませんが、《ラノン》と関係のある曲

《Loch Lomond》
アーティスト Moira Kerr アルバム「MacIain Of Glencoe」
《低き道》が出てくる歌です。「スカイ・ボートソング」で敗走し、スカイ島に落ち延びたチャールズ王子が戦場に残してきた瀕死の兵士が主人公であるとも言われています。死にゆく兵士が友に「君は高き道を行ってくれ、僕は低き道で先に逝くから……」と告げるのです。メロディの方は「鉄道唱歌」とそっくり。というか、たぶん「鉄道唱歌」の元歌です。明治の頃にはスコットランドの歌がたくさん移入され、日本語の歌詞がつけられたのです。その辺の事情については『バラッドの世界』の8章で触れられています。

《Tam Lin》
アーティスト Moira Craig, Michael Henry, Julie Murphy and others
アルバム「The Fairy Dance - Myth And Magic In Celtic Songs And Tunes」
妖精譚です。歌詞は18世紀の詩人ロバート・バーンズによるヴァージョン。内容は妖精女王に連れ去られた恋人を勇敢な乙女が救い出すまで。この歌の主人公の名前がレディ・マーガレットで、アグネスの長姉の名は実はここから。
このアルバムは「the Past Times」というイギリスの懐古ショップが作らせた妖精譚ばかりを集めたオリジナルCDで、イギリスで購入したものです。たぶん、日本では入手困難かと……。

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プロフィール

しまだ

  • Author:しまだ
  • 万年駆け出しのファンタジー小説家。湿った日陰や本棚の隅っこでほそぼそ生きてます。
    ウィングス小説大賞出身。入選作は「霧の日にはラノンが視える」ですが、「裏庭で影がまどろむ昼下がり」が2001年11月10日発売の小説ウィングス秋号に先に掲載されたのでこちらが実質デビュー作。
    好きなものはケルトと妖怪と動物と怪獣。

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