縞田理理の《とろいのです》。

本、音楽、映画、オヤツなどについてちょびちょび 書いていきたいな~と。感想はネタバレなしの方針で。

《デッド・ガールズ》by リチャード・コールダー

ヴァンパイア・カテゴリの本のご紹介です。絶版本なのでAmazonには画像どころかデータもないので画像なしなんです。「ナノテクSF」にカテゴリされていたためか私のヴァンパイア・アンテナに引っ掛からず、最近まで存在すら知りませんでした。たまたまヴァンパイア・テーマの面白い本だと聞き、ネット古書店で購入したのですが、いや、なんで読んでなかったの~という感じでした。
説明が難しい作品で、感想はネタバレを含んでしまうのでご注意下さい。↓


《デッド・ガールズ》リチャード・コールダー著  発行トレヴィル

ナノロボット汚染による人工的ヴァンパイア、《ドール》。それが《デッド・ガールズ》とも呼ばれ、彼女たち自身により《リリム》と呼ばれる少女ヴァンパイアたちでした。この《ドール禍》のためロンドンは封鎖され、リリムとなった少女は既に死んだものと見なされて処刑される運命でしたが、一人の《リリム》プリマヴェラは恋人イグナッツとともにロンドンを脱出し、タイに逃れます……。

これはプリマヴェラとイグナッツの愛の逃避行の物語。
永遠の少女であり、「誰も愛さない」はずのリリムのプリマヴェラはそれでもイグナッツを求め続けるのです。熱烈に。彼だけを。イグナッツは彼女を畏れながらも見捨てられない。逃れられない。二人はシャム双生児のように別ちがたく結びついているのです。プリマヴェラの残酷な純粋さは《少女》そのもの。二人には未来はなく、あるのは全てを殺ぎ落とした純粋な《愛》のみ。
《リリム》であるプリマヴェラはイグナッツの血を飲むけれど、彼女がヴァンパイアであるのはその行為によってではなく、《愛》を糧とするからです。おそらくイグナッツへの愛がなければ彼女は他の《ドール》と同じ、ただの美しいお人形になってしまったのでしょう。でも、彼女はリリム種族を裏切ってまでひたすらにイグナッツを求め続けたのです。まるで赤ん坊が乳を求めるがごとくに。

すべてのヴァンパイアは《愛》を喰らう。プリマヴェラは表面的な吸血行為より一段深い意味でヴァンパイアであり、この物語は表面的にはSFであるけれども深層部分においてヴァンパイア・テーマなのです。ヴァンパイア好きの共通無意識に訴えるイメージも随所に鏤められ、思わず手を打つようなお遊びも(たとえば、脈絡もなく「ポランスキー」なんて名前が出てきたり)。文体は非常にスタイリッシュで特異なガジェットに満ちています。でも難解ではなく読みやすいのは、この異形の未来が少年イグナッツと少女プリマヴェラの眼を通して描かれているからでしょう。ちなみに、女性型アンドロイドを意味する《ガイノイド》という語はコールダー氏の造語だそうです。


残念ながらこの作品は現在絶版であり、入手は困難です。
でも、続編である「デッド・ボーイズ」、そして日本版は幻に終わった完結編「デッド・シングス」の3部作をまとめて復刊しようという運動が水面下で進んでいるそうですので、期待して待ちましょう~。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

全くの余談ですが、今現在わたしが連載中の「モンスターズ~」とイメージがダブる部分があってて鳥肌でした……。特にヴァンパイアはなぜ美しいのかといったことやその設定部分。作品のメインテーマやそのモチーフを使う目的は全く違うのですが、作者のコールダー氏と私のモチーフへの関心の持ち方に似た点があるのではないかと思ったのです……。

*Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

Menu

クリック募金

Jword東日本大震災クリック募金

JWordクリック募金

みちのく未来基金

プロフィール

しまだ

  • Author:しまだ
  • 万年駆け出しのファンタジー小説家。湿った日陰や本棚の隅っこでほそぼそ生きてます。
    ウィングス小説大賞出身。入選作は「霧の日にはラノンが視える」ですが、「裏庭で影がまどろむ昼下がり」が2001年11月10日発売の小説ウィングス秋号に先に掲載されたのでこちらが実質デビュー作。
    好きなものはケルトと妖怪と動物と怪獣。

公式サイト 

新・よこしまです。

Google+



in English/英語版

最近の記事

被災地にスープを

1クリックで被災地にスープ1缶が届けられます。

キャンベル I can project

ユニリーバ東日本大震災募金

東日本大震災復興支援クリック募金

日別アーカイブ

ウィングス文庫

QRコード

QR